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厚木市七沢に住む陶芸家・伊福部玲(いふくべれい)さんが、9月15日から20日まで飯山の「ギャラリー結(ゆい)」で、地元では初めての個展を開く。
伊福部さんは学習院大学を卒業後、一時華道の道に進んだが、72年自宅のある世田谷の尾山台に開窯、独学で作陶を始めた。
83年、厚木への転居を機に陶房も移転、窯は父方の先祖が明治初年まで因幡国一ノ宮宇倍神社の神官であった伊福部(いほきべ)にちなんで「五百城(いほき)窯」と名づけた。89年、七沢の山奥にある陶房庭に薪を燃料とする窖窯を設置、本格的な作陶を開始した。
元東京音楽大学学長で数多くのオーケストラ曲のほか「ゴジラ」を初めとする映画音楽の作曲家として知られた伊福部昭さんは、実の父親。
90年から、韓国や中国の福建省、浙江省の博物館、古窯、窯址巡りも始める。
厚木に来てからは地元の多摩川公民館や七沢森林公園森のアトリエ、七沢沢更生ホーム、厚木西高校、七沢幼稚園、多摩川グリーンホームなどの福祉施設で陶芸指導やボランティアなどもつとめ、自宅では「七沢工房」を開設して陶芸教室も開いている。
伊福部さんの作品の中では、釉薬を使わずに薪で炊き上げる「焼き締め」に定評がある。燃料の灰が作品にくっついて粘土と溶け合って釉薬になる色彩・模様はまさに絶妙。この焼き締めに魅せられて教室に通う根強いファンもいる。
室町や鎌倉期に作られた越前の焼き物が好きだという伊福部さんのこだわりは、越前産の粘土。初めは越前焼きの工芸所の粘土を使っていたが、そのうち |
納得いくものを調達しようと自分で探し求め、やがて上質の土に巡り逢うことができた。産地に野積みしておき、必要な時にトラックで運んでくる。上薬(うわぐすり)もほとんどは、燃料を燃やした後に残る灰を使ってオリジナルの釉薬をつくる。その作風は見かけのやわらかさとは異なって、荒々しく男性的な感じさえするが、食器などは使いやすくそれでいて存在感のある作品だ。
85年以降、デパートや画廊の企画展を主に毎年のように個展を開いているが、厚木で行うのは初めてだ。今回は地元の人に五百城窯を知ってもらうための個展で、釉薬物が主だが、焼き締めも何点か出品する。皿や鉢物などの食器類、花器類、茶器類のほか、干支物の陶板など150点あまりを出品する。
伊福部さんは「開窯以来、ずっと越前の土にこだわり、上質を求めて探し歩いたすえに現在の土に巡り逢いました。大地の豊饒さを抱く作品を味わっていただければ」と話している。時間は10時から19時まで。問い合わせはTEL247・7877番。 |
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