2008.1.1新春インタビュー  小林常良厚木市長に聞く

インタビューに答える小林常良厚木市長

「元気なあつぎ」再生に向けて

 あけましておめでとうございます。地方分権が進む中、一方では中央と地方の格差が進み、自治体経営の舵取りが難しくなってきています。平成20年はどんな厚木になるのでしょうか。昨年1月、「元気なあつぎ」の再生を掲げて市長に就任して10カ月が経過した小林常良市長に、これまで取り組んでこられた改革の実績や今後の課題、まちづくりの抱負などについてお話をうかがいました(聞き手は山本耀暉編集長)

「にぎわい処」拠点に芸術文化を発信・自治基本条例の検討進める

元気な市役所づくり=庁内大改革と行政改革進む

 ■市長に就任して10ヶ月が経過しました。これまでに市政を担当されてご自身では何点をおつけになりますか。また、公約として成果の上がった点をお聞かせください。
 
小林市長 私自身が、自ら何点をつけるということは難しいと考えておりまして、点数は市民の皆さんにつけていただくものと考えています。ただ、これからも100点が取れるよう、市民の目線に立って、元気なあつぎの創造を目指し、市政発展のために邁進していきたいと考えております。また、公約として成果の上がった点は、次のとおりであると考えています。
 第一は多選自粛の問題です。厚木市長の在任の期数に関する条例を昨年の12月市議会に提案し、議決いただきました。この条例は、市長の職に同一の者が長期にわたり在任することにより生じるおそれのある弊害を防止するため、市長の在任の期数について定め、清新で活力のある市政運営を確保することを目的としています。
 第二は情報公開です。本市行政の最高方針、重要施策等を審議する政策会議の会議経過や市長交際費を昨年4月から公開し、市政の透明化に努めています。
 第三は治安対策です。中心市街地の空き店舗を活用して「番屋」を設置しました。この「番屋」は、地域安全活動や環境浄化対策の拠点として、さらに、情報交換の場として市民の皆様に活用していただいています。また、地域、警察、市が連携して防犯パトロールを実施するなど、市街地の体感治安の向上を目指しています。
 第四は庁内大改革。厚木市職員の公正な職務の執行の確保等に関する条例を昨年の12月市議会に提案し、議決いただきました。この条例は、不祥事を防止する体制の整備や公益通報制度の確立など必要な措置を講ずることにより、職員の倫理の保持及び公正な職務の執行の確保を図り、もって、市民に信頼される市政の確立に寄与することを目的としています。
 また、本市の最重要課題について検討するため、特別推進チームを設置しました。現在、中心市街地活性化や産業誘致、地域運営の仕組みなどについて検討しています。
 そして第五番目は地域経済活性化の問題です。
「番屋」とともに「にぎわい処」を設置しました。この「にぎわい処」では、市街地の空き店舗や商業施設の情報を収集・提供するとともに、商業者等による「市街地にぎわい懇話会」の活動支援のほか、市民の皆様の待ち合わせや憩いの場として利用していただいています。
 また、空き店舗対策として、家賃や改装費用の補助を行うことにしました。
 
■市長は就任後、「元気なあつぎ」の実現には「元気な市役所」をつくることがその第一歩だとして、庁内大改革と行政改革に取り組んでこられました。その成果についてお聞かせください。また、庁内大改革の仕上げは事務方のトップである副市長人事だと思いますが、特別職人事についてはどのようにお考えですか。
 
小林市長 庁内大改革の取組といたしましては、情報公開の徹底や市民の利便性の向上などの視点から、すべての事務事業をゼロベースから見直すことに全職員が取り組んでいます。その一例といたしましては、市政に対する市民の理解を深め、公正で開かれた市政を推進するため、市の重要会議である政策会議の結果や資料をホームページなどで公開を始めました。また、市が行う事業などの具体的な実施方法などを定めた要綱の見直しと公表に向け、取組を進めています。
 また、「部長の目標宣言」をスタートしました。この宣言は、市民の皆さんに各部署の役割と目標をお知らせし、分かりやすい行政運営を目指すとともに、部局長の経営責任を明確化し、各職場における職員の経営感覚を養っていくもので、現在、中間報告をホームページ等で公表しています。
 さらに、職員の意識改革を図り、「元気な市役所」をつくるため、市長、副市長、教育長などの間で情報の共有と意思決定の迅速化を図るための「HASSINミーティング」や若手職員との意思疎通を図るための「市長ミーティング」などを行っています。
 行政改革につきましては、事務事業の在り方を改めて考え、その必要性などを見極める新たな行政評価の一手法として「事業の仕分け」を初めて実施しました。
 37の事務事業について「そもそも本当に必要か」「民間に任せてもいいのでは」「もう少しやり方を変えるべきでは」などの厳しい視点で評価をいただき、行政評価委員会で総合的に検討を行いました。各事業担当課は、その結果を十分踏まえて、今後の事務事業の在り方について検討し、事務事業の再編、整理、統合、見直しを図ってまいります。
 また、職員数の削減や指定管理を含めた委託化の推進等についても積極的に取り組んでおり、スリムな市役所の実現により、新たな行政需要への対応とより効果的・効率的な行政運営を推進し、市民サービスの向上に努めてまいります。
 次に、新たな財源確保と職員のコスト意識の熟成を目指し、広告掲載事業を実施しています。封筒を始め、ホームページや冊子、本厚木駅前に設置している大型映像装置「あつぎビジョン」など、さまざまな媒体に広告を掲載しています。収入のありました広告料は、市民の方にとって魅力的な事業に有効に活用し、今後も積極的に取り組んでまいります。
 副市長人事についてですが、昨年4月から今までの助役制度から副市長制度となりましたが、地方自治法の改正の目的でもあるトップマネジメントを強化していくということや、今後、今までにも増して政策的な事項、渉外的な事項が増えていくと考えられますが、市長就任から10ヶ月が経過した中で様々な課題に対する今までの取り組み方を考えてみますと、部長の責任と役割を明確化する中で、今年も当面は現行の体制で「明るく楽しい元気なまちあつぎ」の創造に取り組んでいきたいと考えています。
 
■昨年8月のインタビューでは、2008年4月に機構改革を行うと述べられましたが、庁内大改革との整合性についてはどうお考えですか。
 
小林市長 平成20年4月の組織改正につきましては、組織の簡素化などをねらいとして、担当部長、担当次長等の職制の見直しを中心として行い、庁内改革のスピードは緩めることなく実施する予定です。
 したがいまして、部を変更する大きな組織改正は、平成21年度からスタートする新総合計画を推進するための組織づくりを視野に入れたものとするため、今年は実施しない予定としています。
 
■「市長と市民をつなぐホットライン」「民間有識者会議」についてはいつごろ設置される予定ですか。
 
小林市長 「市長と市民をつなぐホットライン」につきましては、私と市民の皆さんが、より近い距離でお気軽に話ができればと思い、私が地域に出向いて個人やグループの方の話を直接お聴きする「市長の移動談話室」を昨年7月にスタートさせました。また、同時に、予告なしに市民の皆さんをお訪ねして意見交換する「市長のぶらり訪問トーク」もスタートさせました。私と市民のホットラインとして定着できれば幸いと考えています。
 「民間有識者会議」につきましては、効率性や効果を検討した中で、地方自治法第174条に規定する専門員会を置くことを考えています。専門分野における相談や政策立案の支援をお願いし、職員と共に課題解決を図ろうとするものであり、職員の資質向上につながるものと考えています。
 
■中心市街地の活性化の1つとして、「あつぎにぎわい処」の設置、空き店舗対策として1年間の家賃補助や改装費を補助する施策を打ち出されました。その有効性と効果についてお聞かせください。
 
小林市長 「あつぎにぎわい処」は、昨年7月開処以来、既に5千人を超える方が来処されており、中心市街地に設置した市施設として、市民や来街者の利用が広がっています。
 また、商業者や大学関係者などをメンバーとして昨年7月に設立しました「にぎわい懇話会」も「あつぎにぎわい処」を拠点として、清掃活動や芸術文化発信事業など、にぎわい創出事業を展開しています。
 この「にぎわい懇話会」の提言を受けて、昨年11月に新たにスタートいたしましたのが「空き店舗対策事業」です。この事業は、市内の開き店舗の状況を市ホームページで情報発信させていただき、特に中心市街地の空き店舗を利用して新たに店舗を開店する事業者の方に、改装費と家賃の一部を補助させていただくものです。お陰さまで、多くの事業者の方から問い合わせや相談をいただいており、既に、4件の店舗等について補助金交付を決定させていただきました。今後も、市内外の事業者の方に、是非この厚木で魅力ある店舗を開店していただき、多くの方が一日中楽しめるような「にぎわいあふれるまち」にしていきたいと思っています。
 ■中心市街地活性化の取り組みについては、地域のブランド化を進める、地域の資源と環境を活かす、特区を活かす、など様々な手法が考えられますが、厚木市が考えている活性化対策の手法、今後の取り組み、新機軸をお聞かせ下さい。
 
小林市長 中心市街地活性化については、現在、本市の最重要課題を検討するための特別推進チームにおいて検討を進めています。活性化策については、再開発事業やまちなみ誘導のためのルールづくり、民間企業が進出するためのインセンティブ施策、中心市街地活性化基本計画の見直しなど幅広い視点から総合的に施策を展開する必要があります。今後は、具体策の構築を図り、中心市街地のグランドデザインを示していきたいと考えています。
 
■ごみ中間処理施設の建築候補地の選定問題で、昨年11月、これまでの候補地と定めていた棚沢地区を見直し、今後は外部委員を含めた検討委員会を設置して棚沢を含めた複数の候補地から選定すると発表されましたが、計画の遅れは避けられない状況になっています。候補地選定の目標年次と新しい中間処理施設の稼動時期をいつごろに見ておられますか。また、計画の遅れに対してはどのように対応されますでしょうか。
 
小林市長 ごみの中間処理施設建設候補地につきましては、(仮称)建設候補地再検討委員会を設け、再検討に着手いたしますが、平成24年度を新しい施設の稼動としておりました計画は事実上困難であります。したがいまして、候補地選定や新しい施設の稼動時期につきましては、今後、構成市町村や厚木愛甲環境施設組合と十分協議した上で、計画していくとともに現有施設の機能を保持する方策についても検討してまいりたいと考えています。
 
■一般廃棄物の減量化と資源化のさらなる推進、企業のゼロエミッション体制構築の支援を上げられておられますが、資源化率が県下では最低といわれている厚木市の生ごみや資源ごみなどのリサイクルには今後どのように取り組んでいかれますか。
 
小林市長 ごみの減量化・資源化をさらに推進するため、平成19年度において、これまでのごみ処理方法を検証し、廃プラスチックを新たな回収品目に加えることや、効率的で効果的な収集運搬体制を検討し、新しい処理システムを策定します。
 今後のスケジュールとしては、この新たなシステムによるモデル地区事業を平成20年後半に実施し、平成21年度には全市的に展開していきたいと考えています。
 
■厚木市は下古沢地区に市営斎場の新設を決めていますが、少子化時代に市民の間には火葬施設の建設ばかりではなく、式場施設の建設を望む声も強くあります。式場施設を併設するお考えはありませんか。
 
小林市長 新たな斎場施設につきましては、平成23年春の供用開始をめどに、事業地を下古沢上分地区内とし、事業を進めています。
 新たな施設の建設に当たりましては、葬祭施設を併設するものとして現在施設の設計を進めており、市民意識調査などでの高い要望や地域の皆様の期待にお応えしてまいりたいと考えています。※平成15年度市民意識調査において、71・5%が併設を望んでいる。(火葬所のみの施設としたものは5・1%)
 ■交通対策で鉄道延伸計画の促進と小田急線・相鉄線の相互乗り入れの実現を目指すことを上げています。具体的な延伸計画と小田急線・相鉄線の相互乗り入れへのアプローチをお聞かせください。
 小林市長
 厚木市、愛川町、清川村で構成する厚木・愛甲まちづくり研究会において、昨年から引き続き3年掛けて鉄道延伸等調査研究事業を行い、小田急多摩線の延伸、小田急・相鉄線の相互乗り入れについて調査・研究するとともに、神奈川県鉄道輸送力増強促進会議に対して要望活動を行ってまいります。
 ■都市計画道路の抜本的な見直しを上げられていますが、具体的に見直す都市計画道路はどこでしょうか。
 小林市長
 都市計画道路の見直しは、未着手区間のある14路線と概成済となっていますが、計画幅員に課題のある1路線を含めた15路線を見直し対象路線としています。現在、路線ごとの見直し評価を実施しており、平成19、20年度の2か年を掛けて検証するものであります。また、来年度実施予定の交通ネットワークの検証結果をもって、一定の方向性を見いだしてまいります。
 
■厚木インター南部のアミューズメント拠点地区の再開発地区計画について変更を考えているとうかがっておりますが、その見通しについてお聞かせください。
 小林市長 
アミューズメント拠点地区(約4・4ha)におきましては、永年にわたり、法規制により土地利用が図れず、今日を迎えていたわけでございますが、今回、一体的な土地利用による誘導の枠を緩和することにより、個別の土地利用の誘導が可能となるような変更を考えております。また、建物用途の範囲を拡げるなどのことにより土地利用の自由度が増し、南部産業拠点として地区の活性化が図られるものと考えております。
 
■市立病院の産婦人科医を確保するため、11月から新たな人材確保として1ヵ月83万5千円の業務手当を支給することになり、本給と合わせた給与は年間2千万円〜2千500万円程度となり、民間の産婦人科医と同程度の待遇となりましたが、現段階における応募状況と医師確保の見通しについてお聞かせください。
 小林市長
 当該条例の施行を踏まえ、大学病院等への協力要請はもとより、医師の人材紹介会社や日本産婦人科学会のホームページへの登載による公募など、あらゆる手段を活用し、産婦人科の再開に向けて医師の確保に努めています。
 その結果、複数の医師から問い合わせをいただき、現在、交渉を行っているところであります。
 
■平成20年度の予算編成にあたって小林色をどの程度盛り込まれるお考えですか。具体的な施策をお聞かせください。
 小林市長
 「明るく楽しい元気なまちあつぎ」を目指して、あつぎ元気アップ戦略として「環境と調和した活力あるまちづくり」「健やかに人をはぐくむまちづくり」「市民と行政が共に自立したまちづくり」の3つの戦略と10の施策項目を踏まえた事業の推進に積極的に取り組み、現在及び将来の市民ニーズに見合う諸施策を展開したいと考えています。
 
■平成21年度のスタートを目指して、地域再生のグランドデザインともいえる「新総合計画」が策定されます。近年、地域やまちづくりにかかわる条例を制定する自治体が増えてきました。新総合計画の策定と連動する厚木市独自の「自治基本条例」や「まちづくり条例」を制定するお考えはありませんか。
 小林市長
 地方分権の進展とともに、市民協働などへの市民意識の変化に伴い、地方公共団体では、住民自治の拡充や仕組づくりが必要となってきており、この具現化のために、統一的な理念を明確にすることが求められるようになってまいりました。本市としても、自治体の自治の方針と基本的なルールを定める自治基本条例について、市民とともに検討を始めていきたいと考えています。
 ■本日はありがとうございました。