元気あふれる創造性豊かな協働・交流都市へ
自治基本条例の制定とセーフコミュニティ認証取得を目指す
■市長に当選してから1年10ヵ月が経過しました。今年はその折り返し点に立つわけですが、これまでを振り返って公約の実現度や残り2年で取り組むべき課題についてお聞かせください。
小林市長 私はこれまで、「みんなでつくろう元気なあつぎ」をキャッチフレーズに「市民が安心して安全に暮らせるまち」、「活力ある、堅実な産業振興」、「徹底した情報公開」の三つの重点施策を中心に、私の信念である「現地対話主義」を貫き、様々な場面で大切な多くの市民の声を伺い、政策に反映するように努めてまいりました。
平成19年度は、「自治会長と市民とのまちづくりフリートーク」「子育てコミュニティトーク」「市長の移動談話室」「市長のぶらり訪問トーク」などの市民との直接対話は60回を数え、多くの市民の皆様の声をお伺いいたしました。この回数は、県内で一番多いと自負しています。今年も「現地対話主義」を貫いてまいりたいと考えております。
また、11の政策理念と83の項目に基づき実施する事業のうち、本市行政の最高方針、重要施策等を審議する政策会議の経過や市長交際費の公開、新たな公共交通システムとして連節バス導入など、既に7事業が完了し、76項目に基づく事業について着手している状況です。
今年は、一昨年から市民協働により策定を進めてまいりました新総合計画「あつぎ元気プラン」が、いよいよ4月からスタートいたします。将来都市像「元気あふれる創造性豊かな協働・交流都市あつぎ」を目指し、「ひと」、「まち」、「くらし」に視点を置いた3つの重点戦略を定めるなど、様々な施策をより効果的かつ効率的に展開してまいりたいと考えております。
特に、教育や子育て支援の充実などに関連する施策、中心市街地の活性化や産業集積、地球温暖化防止対策などに関連する施策、体感治安の向上や生涯現役健康社会が実現できる施策などを展開し、あつぎのまちが元気になるまちづくりを進めてまいります。
さらに、昨年に引き続き自治体運営のルールである「自治基本条例」の制定に向けた取組や「世界に誇れる安心安全都市」の実現に向け、世界保健機関(WHO)によるセーフコミュニティ認証取得を目指すための取組を、市民の皆様と協働で進めてまいります。
■総合計画は市民が具体的なイメージを描き期待感の持てる計画となることが大事です。元気あふれる、創造性豊かな、協働・交流という3つの理念を掲げて、12年後の厚木市をどのような方向に導くお考えでしょうか。
小林市長 第9次厚木市総合計画につきましては、平成32年度を目標年度とし、本市が将来に向かって持続ある発展を続けていくために、「市民」の皆様も、「あつぎのまち」も元気になることが重要であると考え、愛称を「あつぎ元気プラン」といたしました。また、将来都市像を「元気あふれる 創造性豊かな 協働・交流都市 あつぎ」とし、市民の皆様がこのまちに誇りを持ち、明日への希望を持つことができる「元気あふれる」まちを目指すこと、本市の豊かな自然環境と調和した新たなまちの魅力や文化を創造し、発信する「創造性豊かな」まちを目指すこと、さらに、市民と行政とが協力・連携して、様々な課題に取り組む「協働」のまちと、国際化や広域化の進展をとらえ、ひと・もの・文化など幅広く「交流」するまちを目指すものでございます。
■将来都市像を実現するため重点的に取り組む戦略の1つとして「地域力を高める戦略」をあげていますが、地域力とは何か、その戦略についてお聞かせ下さい。
小林市長 地域力とは、「地域への関心」や「地域の自治力」などを高めることにより、地域の問題について、市民や企業を始めとした地域の構成員が、自らその問題の所在を認識し、自らあるいは、その他の構成員と協働して解決することができる「力」と考えております。
■平成19年度に実施した市民意識調査では、61・3%の人が市の将来イメージとして「自然環境の豊かな都市」をあげています。厚木市の資源である山と川、農地や自然環境を活用して、自然体験と環境保全活動、里山復活と林業体験、多自然型川づくり、農業体験と地産地消、エコ農園とリサイクル、滞在型市民農園などを体験できる大規模な「クライン・ガルテン構想」(市民農園ではなく市民農場という規模)に取り組むお考えはありませんか。
小林市長 厚木市は相模川を始めとする河川や丹沢・大山の山並み、農地など豊かな自然や温泉郷などの地域資源に恵まれており、この豊かな自然環境の恩恵を誰もが享受できるように、自然環境の保全や人と自然との共生を目指し、多自然川づくりによる水辺の整備、里山保全や農業体験の実施、市民農園の設置や地産地消などに取り組んでおります。
今後は、新総合計画「あつぎ元気プラン」のスタートにあわせ、市内各地域の自然特性や農業環境を活かす形を基本として、気軽に農業が楽しめるよう遊休農地を活用した、様々な大きさの区画をもった市民農園や市外の方が厚木に滞在しながら農作業を体験できる市民農(2面へ続く)
園の開設に向け取り組んでまいります。
■現在厚木市が取り組んでいる自治基本条例は、住民投票条例を包括したものとなるのでしょうか。
小林市長 自治基本条例につきましては、市民参加や協働のまちづくりを進めるための理念や市政運営のルールなどを条例として制定するものです。
条例の内容につきましては、市民の皆様とともに考えることが大切でありますので、昨年8月に公募市民の皆様により発足しました「厚木市自治基本条例の制定を考える市民会議」からの提言を始め、多くの市民の皆様からの意見をお聞きしながら、検討してまいりたいと考えております。
■地方分権とは自治体が自ら考え創意してまちづくりを行うという権限を付与されたものですが、この分権の流れを単に国から県、市町村という地方自治体に移すだけではなく、生活を単位とした地域に「権限と財源」を移譲し、地域にできることは地域で行うという「地域内分権」のまちづくりが求められています。これまでまちづくりを担ってきた自治会などの行政協力団体からボランティア団体、さらにはNPO法人、団塊世代の退職者、多彩な文化芸術活動に取り組む地域住民、環境や福祉事業に熱心な企業など新たなまちづくりの担い手も出現してきています。厚木市は地域内分権を包括的に進めるため住民自治の領域を拡大し新たな手法を構築するお考えはありませんか。
小林市長 地域のニーズや実情にあった地域社会を形成するためには、「自分たちの地域は自分たちでつくる」という住民意識のもと、市民の皆様が自らの判断と責任においてまちづくりを進める、新たな地域自治に向けた体制づくりが必要と考えております。
現在、行政の縦割りのままに、様々な補助金や交付金により地域づくりに向けた事業が展開されていますが、行政目的を持った補助金等であることから、その使途に制約があり、必ずしも、地域課題の解決に的確に対応できていないのではないかと感じております。
来年度からは、地区市民センター・公民館を単位とする地域に交付している補助金等を整理・統合し、各地域に一つの補助金等として交付し、これにより、地域づくりの事業資金の面から、地域の皆様の判断のもとで、メリハリのある事業展開ができる環境づくりにつとめてまいります。
地域の皆様と心を一つにして、地域づくりの補助金を活用していただく中で、市民と行政が、イコールパートナーとなってまちづくりを進め、新たな地域自治に向けた体制づくりに取り組むことが、「地域内分権」に繋がるものと考えております。
■格差社会における地方自治体のローカルセーフティネットについておうかがいします。
小林市長 本市では、平成16年3月に、『厚木市地域福祉計画』を策定し、市民、団体、事業者等や市が連携し、地域における支え合い活動の促進や福祉サービスの適切な利用の推進に努めております。そうした中、共に支え合う機能の脆弱化や雇用情勢の変化等により、所得などの格差が広がるとともに、社会的排除の対象となりやすい方への対処、ニート、ホームレスといった新たな貧困を含む低所得者の問題など、社会的援護を必要とする方々も多く存在してきている状況です。
福祉サービスのすき間を埋めるという視点から、制度の谷間にいる方への対応も必要であり、住民主体による地域社会での支え合いや見守り活動の推進、市民の人権問題に関する普及や福祉意識の向上を図るほか、民生委員・児童委員や福祉関係事業者、ボランティア団体、NPO等とも連携し、地域の中で誰もが自立した生活が送れるよう地域福祉の推進を図ってまいりました。今後につきましても、さらに、市民参加と協働によるセーフティネットの拡大に力を注いでまいりたいと考えております。
さらに、地域での自立生活支援や社会的弱者救済のため、生活者や福祉サービス利用者の視点に立ち、高齢者の健康増進や生きがいづくり、障害者の就労支援、子育てや育児支援、地域福祉人材育成など、福祉サービスを必要とする人への施策を充実するとともに、日常生活上の様々な支援や就労に早い段階で結びつくよう、情報提供や身近なところでの相談機能の強化を図ってまいります。
■厚木市は平成22年度中のセーフコミュニティ(SC)の認証取得に取り組んでいます。昨今、自己の持つフラストレーションを弱い者やまったく無関係な他人に向けるという殺傷事件が多発していますが、SCの取り組みによってこうした事件を防ぐことは可能だと思いますか。
小林市長 セーフコミュニティとは、「事故やけがは決して偶然の結果ではなく、予防できる」という理念のもと、市民の方々や地域、行政等の関係者が組織横断的に連携・協働して、コミュニティ現場の実態に合わせて問題を一つ一つ改善して、人の一生にとって最も大切な「健康」と「安全」を不慮の事故やけが等から守り、住み良い魅力的なコミュニティを創っていこうという取組で、世界的にその手法が公認されたものです。
近年、地域コミュニティの人と人とのつながりの希薄化、人々の不安と孤立化というコミュニティ環境の中で、交通事故、転倒等によるけが、幼児の事故、子どもや高齢者の事件・事故、青少年等による暴力やDV、自殺、あるいは街頭犯罪の増加による体感治安不安の増大など様々な問題が身の回りで起きています。
市民一人一人の生活安全充足感の向上を現実のものとするためには、これらの諸課題を三位一体の包括的課題として、すべての関係者が協働して問題を解決していく必要があります。すなわち、地域の中で加害者も被害者も生まない、元気なまちづくりの手法です。また、セーフコミュニティは、単に事故やけが等を減少させるだけでなく、コミュニティのあり方を共に考え、共に汗を流すことで、「信頼と絆」の強化
・ 地域の安全活力の活性化 ・ 人々の生活の質(QOL)の向上という好循環を生み出す市民協働の地域社会開発プログラムの取組みでもあると考えております。
■市民参加による「市民協働・地域自治」の推進は行政改革と表裏一体の関係にあり、職員の定数減や無理・ムダをなくし、事業の仕分けや外部評価制度を導入した効率的な行政運営と正比例するものでなければなりません。厚木市の行政改革は市民感覚からするとまだまだかけ離れているという指摘もありますが、思い切った行政改革を断行するお考えはありませんか。
小林市長 本市は、これまでも社会経済情勢の変化や市民ニーズの多様化などに対応し、行政運営の簡素化・効率化を推進するため、行政改革に取り組んでまいりました。
しかし、社会の変化が著しく、地方公共団体を取り巻く環境が非常に厳しい時代にあって、行政改革には停滞が許されず、常に最優先で取り組まなければなりません。平成21年度から新たに取り組む第4次行政改革は、行政の効率化・スリム化と市民との協働を中心に取り組んできたこれまでの行政改革をより一層進めるとともに、「成果主義・顧客(市民)主義・市場主義」など新たな経営的視点を取り入れ、これまでの「行政を運営する」ことから、一歩前に出て、「行政を経営する」視点に立ち、将来を見通して、「あつぎの元気」の創造に向けて、抜本的な改革に取り組んでまいります。
また、外部の視点から、事務事業に「くさび」を打ち込むため、昨年度は「事業の仕分け」、今年度は「外部評価」を実施しました。市民の視点や専門的・経営的な視点から評価をいただき、市民サービスの向上とより効果的・効率的な行政運営の実現、職員の意識改革等に取り組んでいます。
■中心市街地の活性化対策として取り組んできた「にぎわい処」や空き店舗対策事業の成果とにぎわい懇話会への支援について伺います。また、昨年11月は活性化の起爆剤として「にぎわい爆発フェスティバル」を開催しました。しかしイベントは一時的なもので恒常的な活性化に結びつかないとする指摘もあります。イベント的な手法と効果についてはどうお考えですか。
小林市長 厚木一番街通りに開設した「あつぎにぎわい処・番屋」は、昨年6月に、1万人目のお客様をお迎えすることができました。それ以降も、たくさんの方にご利用いただき、既に1万7千人を突破しております。
「にぎわい処」の事業についてですが、「空き店舗対策事業」では、空き店舗を利用して開店した27件について、改装費と家賃の補助を決定しました。意欲ある事業者を支援することにより、活気やにぎわいのあふれる商店街の形成、商業の振興を図ることができ、飲食店やサービス業の事業主を呼び込むことで、違法風俗店の進出の抑止となり、体感治安の向上にも一定の効果が図られたものと考えております。
支援をさせていただいております「市街地にぎわい懇話会」の活動としまして、昨年5月に、市内5大学の28人の学生をメンバーとする「にぎわいアドベンチャー隊」が発足しました。打ち水イベントや、5大学対抗音楽祭、食育セミナーなど、計画から実施までを学生の手によるイベントには、たくさんの方にご参加いただきました。
そして、11月8日、9日に開催しました「にぎわい爆発フェスティバル」は、複数のイベントを同時に実施したもので、市内はもとより、市外からもたくさんの方をお迎えすることができました。特に、初めての開催となりました「にぎわい爆発あつぎ国際大道芸」には、8万2千人もの方においでいただき、国内外のストリートアーティストの芸と技を堪能していただきました。中心市街地の16箇所に会場を設定したことで、今までのイベントとは異なり、お客様に街の中を回遊していただく中で、初めての場所に足を運んだり、いつもと違う街の雰囲気を感じたりした方も少なくなかったと思います。
また、「にぎわい爆発フェスティバル」は、たくさんの方に参加していただいたことで成功することができたイベントであると思っています。子どもたちや高校生、そして大人とイベントを支えてくださったボランティアの方、物産フェアを盛り上げてくださった商工会議所のメンバーや商業者、県人会の方々など。「にぎわい爆発フェスティバル」は、市民と協働して実施することができたイベントとして、元気な厚木の姿とともに、新しいまちづくりの形を、たくさんの方の胸に刻むことができたと思っています。
■昨年10月、玉川、森の里、相川の3地区がごみ減量化・資源化新システムのモデル地区に指定され、事業がスタートしました。今年10月から全地区でスタートするわけですが、資源化、減量化の見通しをお聞かせ下さい。
小林市長 モデル地区事業の成果としては、資源化量が前年から比較しますと飛躍的に増加しているほか、新たな資源化品目のプラスチック製容器包装も当初の見込みより資源として多く出されており、循環型社会の形成に向けて更なるごみ減量化・資源化の推進が図られているものと考えており、今年10月の全市展開に期待をしております。
今後も、市民の皆様に御理解・御協力をいただくことが必要不可欠でありますので、より多くの説明会を開催するとともに、広報・啓発活動を積極的に展開するなど、周知徹底を図ってまいります。
また、せん定枝や廃食用油の資源化を図るとともに、3R〔発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再生利用(リサイクル)〕の推進に努め、平成26年度までに、平成14年度と比べごみ減量目標30%、資源化率目標35%とする「ミッション35」の達成を目指してまいります。
新中間処理施設の規模(処理能力)につきましては、平成20年3月策定の厚木愛甲ごみ処理広域化実施計画では、ごみ焼却施設が1日当たり290トン程度、粗大ごみ処理施設が1日当たり30トン程度の処理能力を持つ規模となります。
建設候補地の選定問題の見通しについては、平成20年4月からごみ中間処理施設建設候補地の再検討を行ってきまして、昨年12月に最終の検討委員会が開催されたところであり、現在、報告書のまとめに入っているとの報告を受けているところです。
再検討委員会からの報告を基に市としての候補地を決定していくこととなりますが、前回の候補地選定の一連のプロセスを十分斟酌し、慎重に候補地選定を進めたいと考えております。
■市立病院の産婦人科の再開がままなりません。待遇改善だけでは難しい面もあるのかという気もしますが、医師が集まらない、定着しない理由はどこにあるとお考えですか。
小林市長 お産は、24時間体制で対応する必要があります。また、出産にはリスクを伴うことが多く、状況によっては、その場で普通分べんから帝王切開に変わるケースもあります。さらに、医療訴訟につきましても出産に関わるものの比率は非常に高くなってきています。厳しい勤務条件、高いリスク、医療訴訟の多さなどから、産婦人科を敬遠する傾向が強いことなどから、医師不足が発生しており、産婦人科の医師が集まらない状況となっております。
医師が定着しない理由としては、複数の常勤婦人科医師を同時期に確保することができなかったことから、1人の産婦人科医師では、思うように産婦人科診療ができなかったことが要因かと思います。特に分べんについては、診療の制限を加えない場合は、3人の常勤医師が必要となります。現在は、婦人科の診療を行っている状況です。
■米国発の金融危機とその波及により日本経済がかつてない厳しい状況にさらされています。平成21年度の予算編成にあたって、法人市民税などの減収をどの程度お考えになっていますか。またその不足分をどのような手だてでカバーするお考えですか。
小林市長 企業業績の悪化、雇用情勢の不透明化等により、市税への影響は非常に大きいものと考えられます。特に法人市民税につきましては、大幅な減収が予想されます。しかしながら、平成21年度予算編成につきましては、総合計画に位置付けられた実施計画事業を着実に推進するとともに、市民サービスに影響が出ることのないよう、事業内容を精査し、経費削減の徹底を図り、事業の必要性、緊急性を考慮した事業の予算化に努めてまいりたいと考えております。また、金融危機の顕在化で実体経済に大きな影響が出てきており、緊急の課題として経済対策が必要であると考えています。
■施策の展開を期待しています。本日はどうもありがとうございました。
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