厚木に伝わる故事・諺・格言など百句
厚木市水引の郷土史研究家・中丸武夫さん(78)が、このほど古き時代から生活の中に生きてきた諺(ことわざ)と格言をまとめ『先人に学ぶ』と題して自費出版した。
厚木地方の農家や庶民の家庭生活の節々で、親から教わった家の教えや村社会の教え、自然や農耕の教えをまとめたもので、今日でいう家庭教育のような話だ。一家の団らんの場である囲炉裏を囲んでコミニュケーションづくりをしながら、家庭のしつけや家の教えを自然に学んだいろり端の教え、四季の行事を通じた農耕の教えなど今に生きる先人の知恵を伝えている。
中丸さんは依知村の農家の出身で子どもの頃から両親の背中を見て育ち、兄姉からもさまざまなことを教えられて成長した。長らく会社員勤めを経験、退職後は、趣味の郷土史の研究に打ち込み、厚木市の文化を考える会や公民館歴史民俗談話会、公民館の文化振興会、郷土資料館の運営協議会委員などをつとめながら、15年ほど前から生涯学習の郷土史講座を担当してきた。講座は現地学習を取り入れて年4〜5回開催、テキストもパソコンを使って、神社・仏閣や遺跡資料などの写真や地図を盛り込み自前で制作した。
平成19年からは観光ボランティアガイドにも参加、鎌倉観光文化検定3級、神奈川県検定ライセンス3級の資格を取得、厚木や県内各地を訪れる観光客のボランティアガイドもつとめている。
今回まとめた「先人に学ぶ」は、30年ほど前から生活の中で気がついたり思い出したことを、書き留めていたメモをもとに書き下ろしたもの。
第1章の「今に生きる先人の教え」は平成7年度に1年間にわたって高校新聞に掲載したものを加筆補正したもので、古くから伝えられてきた年中行事や暮らしの中に生き続けてきた厚木の風俗や習慣、家の伝えなどをまとめている。第2章の「故事ことわざ百句」は、郷土史講座のテキストとして使用するため、折りにふれまとめたもので、1、2章とも相互に関連性を持たせているのが特徴だ。中丸さんは親から教わった話を幼い頃から聞き、噛みしめ、人間の生きざまをこの年になるまで、ずっと感じて生きてきたという。それだけに「現在の世相は、社会や政治にいたるあらゆる分野で、日本人の精神文化が地に落ちた感がする。また規範意識やマナーの悪さなどは目にあまるものがある」と嘆く。
出版に際しては同市妻田に住む水墨画家・又村和夫さんが、カバーと表紙絵、挿絵など68点を描いてくれた。内容とマッチした素朴な感覚が書物を引き立てている。
中丸さんは、「温故知新という言葉がありますが、本書は私が古くて新しい何かを求め、人生の中に生き続けてきたものをまとめたものです。若い方には『心の宝』としてお読みいただければうれしい」と話している。
『先人に学ぶ』は1部1500円、有隣堂厚木店、内田屋書房一番街店で発売中。
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