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東名厚木病院消化器科
中川 望
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はじめに
世界的に見て私達日本人は 胃癌の非常に多い民族ですが、近年食事の欧米化に伴って大腸癌が増えてきております。そして大腸癌の約90%は大腸ポリープから発生するとされています。今回は特にこの大腸ポリープについて当クリニックでの結果をまじえお話しします。
大腸ポリープとはどういうものでしょうか
ポリープを平たく言うなら「イボ」です。しかし私達の顔にできる「イボ」は放置しても癌にはなりません。この点で大腸ポリープはただの「イボ」と決定的に違います。大腸癌の源であるという点がポリープの最も重要な点です。ただし全てのポリープが癌化するわけではなく、小さなポリープは癌化にいたらず一生を終えると考えられています。
ポリープ切除と大腸癌予防の関係について
現代の医学では、予防が大切な時代になりました。大腸ポリープがあるからといって自覚症状はありません。しかし、そのまま放置しておくと長い年月を経てポリープが癌化する場合があるのですからポリープを内視鏡的に切除することが、将来の大腸癌の発生を防ぎ癌予防につながるのです。米国では実際に臨床研究がおこなわれポリープ切除によって大腸癌が予防できることが証明されました。
ちなみに、大腸癌の発癌物質としてもっとも重要なのは、肉食と考えられています。世界で最も多く肉を食べる世界最大の放畜国ニュージーランドは、世界で最も大腸癌の多い国となっています。
当院における大腸ポリープの頻度
大腸ポリープの頻度を、当院で過去1年間大腸内視鏡検査を受けた人数で調べてみますと、検査をうけた337人中、82人にポリープを認めました。検査をうけた約4人に1人(24%)ポリープを認めたわけです。さらに詳しく年代別でみてみます
と、大腸ポリープの発生頻度は、20代では2%、30代では4%と低率でしたが、40代からは急増し22%、50代では32%、60代34%、70代35%、80代31%でした。
大腸内視鏡検査をして大腸癌が見つかるのは稀ですが、大腸癌の予備軍としての大腸ポリープが見つかる頻度は非常に多いのです。
大腸内視鏡検査はつらい?
確かに以前は、大腸内視鏡は時間がかかり、痛みを伴う検査でした。しかし、現在では熟練した内視鏡医により比較的簡単な検査になりました。検査時間は多くの場合10分前後で終了します。
大腸ポリープの治療
大腸内視鏡検査でポリープが見つかったら、その場ですぐに内視鏡を用いてポリープを切除してしまうことができます。たとえポリープが癌化していても、表面に癌がとどまっていれば切除し、治療してしまうことができます。患者様は1日だけですが入院して経過をみます。通常痛みなどの自覚症状はありませんし、退院後は内服薬もいりません。
当院での大腸内視鏡検査
以上のように、大腸ポリープを放置しておくと癌にいたる可能性から、診断と同時に大腸癌の予防としての治療をかねた大腸内視鏡検査は、特にポリープの発見頻度が急増する40代からは必須の検査と思われます。当院では月曜から土曜日(月曜から金曜までは午後に。土曜日は午前。)までの毎日大腸内視鏡検査を施行しています。これを契機に1人でも多くの方がすすんで大腸内視鏡検査を受けていただければと願っております。
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