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NO56(2003.05.15) 芸妓心得「注意すべき事柄」 |
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昭和42年(1967)4月10日、厚木三業組合は、芸妓心得である「注意すべき事柄」を印刷して配布した。「注意すべき事柄」を印刷した厚紙は、たて37・5cm、よこ52・2cmの大きさ。芸妓置屋の目につく場所などに掲示されたものであろう。 12項目にわたる「注意すべき事柄」の全文をあげると次の通りである。 注意すべき事柄 一、芸妓は接客上の品位を保つ為に日常の行動に充分に気をつける事。 一、芸妓は自宅に於て料亭類似の行為をしてはならない。 一、客席に於いて聞いたお客様の要談などは他言せぬ事。 一、飲酒運転をするお客様の車には同乗しない事。 一、自分の所属する置屋主人の注意を良く守り、困った事等が起きた時は、良く相談をし、勝手な行動をつつしむ事。 一、午後三時には、いつでもお座敷に行ける様準備をしておく事。 一、セット、風呂等、すぐにお座敷に行けぬ様な時は、見番事務員に申し出る事(見番に所定の札があるので、名札の上へ載せておくこと)。 一、定休日は毎月第一・第三日曜日とし、一月、十二月は別に定める。 一、臨休及びその他、止むを得ない理由の為休業する場合は、必ず置屋主人に申出をし、主人より見番へ届け出る事、病気などの場合も同様です。 一、本人からの用事休みの届出は、絶対に認められない。 一、組合員相互の迷惑になる様な行動はしない事。 一、定休日の外に、一ヶ月に二日間以内の臨時休業が認められるが、家事その他の諸用は、定休日・臨休日に済ませる様にする事。 昭和四十二年四月十日 厚木三業組合 右の文言のうち、七項目の「セット」は、「パーマネントをかけた後に、髪形をととのえること」(『広辞苑』である。 また、十項目の「用事休」の「用事」は、花柳界用語で「用事をつける」といって、商売を休むことをいう。「用事」は体の調子や私用が多いが、不幸の場合やその逆の場合もあった(w女芸者の時代x)。 「注意すべき事柄」が配布された当時の厚木花柳界芸妓総数は百二十人であった。この百二十人の芸妓と芸妓置屋、料亭それぞれが、厚木三業組合、厚木二業組合という二つの組織に分かれて営業していたのである。 厚木三業組合の事務所(見番)は厚木市寿町一丁目五ノ三。厚木三業組合の芸妓置屋は左記の三十一軒であった(『厚木市躍進の十年と現勢』)。 喜久の家、喜久よろ寿、清花、京鈴の家、鯉本、新鈴の家、新勢喜屋、新照の家、鈴の家、寿津花、鈴本、せき蔦の家、せき花の家、勢喜家、染ふじ、鶴の家、照の家、照初の家、照福の家、豊の家、豊藤よし、春本、春よし、松尾、万早(まさ)の家、万寿本、芳本、分鈴の家、分寿津花、分勢喜家、分豊由喜。 置屋には「分(わけ)」がつく屋号があるが、この「分)も花柳界用語の一つである。 「分」は、芸妓の玉代を主人と半分に分けることであり、「分看板(わけかんばん)」は、自分がいた芸者屋(置屋)から分れて独立することである。独立しないで置屋に属して働く場合には、「看板料」といって、毎月決められた金額をその置屋に払うことになるのである。 昭和四十二年頃の厚木花柳界について『厚木市躍進の十年と現勢』は、次のように述べている。 「現在料亭二十七、置屋十三、芸妓百二十人が二つに分れて業務を競い、互いに規模を拡げ、設備を整えて公私の賓客接待、各種産業界の社交、市民慰安の場として、市の発展に少なからぬ貢献をしている」。 |
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