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1997年10月5日、市民かわら版の山本編集長が、横須賀を母校とするアメリカ第7艦隊の原子力潜水艦「ブレマートン」に乗船、体験航海を行いました。日本の政治家や自衛隊幹部などを乗せる「VIPクルーズ」の一員として参加したもので、朝、横須賀港を出航して相模湾沖合を航行、夕方寄港するという1日クルーズです。山本編集長は個人的に交流があったアメリカ海軍のジム・ウイリアムス大尉から直接招待を受けたもので、同大尉によると当時、日本のマスコミ関係者を原潜に招待するのは初めてのことだそうです。 私たちVIPクルーズの一行には、事前に参加者の氏名、住所、電話番号、職業などのリストをアメリカ海軍司令部に提出するよう申し入れがあり、その後、司令官と乗船する原潜の艦長から正式な招待状が送られてきました。用意された資料の中には、原潜の解説資料や「ドライバーライセンスカード」まで同封されていました。 |
上は原潜の艦長・右は第7潜水艦部隊司令官からの「VIPクルーズ」招待状。 |
7時45分、横須賀基地内のアメリカ第7艦隊潜水艦部隊司令部に集合した私たちクルーズは、アルバート・コネツニー司令官(少将)の出迎えを受け、簡単な朝食をいただいて記念撮影をした後、バスで原潜が接岸されているドックに向かいました。8時30分、横須賀港を出航。原潜には原子力空母インデペンデンスを旗艦とする「第7艦隊」のタナー司令官も乗船しました。最初に、原潜のコックス艦長のあいさつがあり、次に担当官より原潜の構造、機能などについてスライドやビデオを使ったレクチュアを受けました。その後5人位の少人数に分かれて原潜内くまなくを見学しました。乗務員のベッドルーム、巡航ミサイルトマホークとその発射装置、ソナーとレーダー室、魚雷発射装置、潜望鏡室、そして原潜をコントロールするコックピットなど、すべてがハイテク技術を駆使した装備で、私たちは軍事技術のもつ威力をまざまざと見せつけられました。 |
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原潜は横須賀港から相模湾に入ると、水深50mから60m位を潜水走行します。担当官の説明によると、ソナーやレーダーによって、原潜は走行する自分の位置を正確に知ることができるほか、クジラなどの大きな魚や海底の岩なども感知することができるそうです。水中走行はまったく揺れがなく音も静かでした。浮上走行では僅かに揺れを感じましたが、それほど激しいものではなく、小刻みな揺れという感じでした。潜望鏡室からハシゴを伝って艦上のマストまで登ると、目の前に相模湾が一望のもとに広がり、付近には漁船や貨物船が走行している姿も見えました。紺碧の海を白い波しぶきを立てながら走る黒い巨体は、壮観である以上に不気味さを感ずるに十分なものでした。また、潜水艦の得意技である急速潜行、急速浮上なども体験、事前にアナウンスがあって、私たちは艦が傾斜していく動きを直接体で感ずることができました。 巡航ミサイルトマホークは、艦の右舷と左舷に2基の発射口があって、係員がエアープッシャーによる模擬発射の様子を見せてくれました。魚雷発射装置の前では私たちに模擬の発射ボタンを押させるなどのサービスぶりで、発射後に「ガガガーン」という耳をつんざくような金属音が艦内にこだますると、まるで敵艦に命中したような錯覚を覚えました。このほかコックピットでは数人のクルーズが担当官のアドバイスで原潜の操縦を体験しました。 |
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VIP待遇のせいか原潜乗務員のマナーはよく、教育も行き届いた感じがしてとても友好的でした。カメラも原子炉の撮影以外はどこを撮影してもOK、2名の米軍カメラマンが私たちを適時に写してくれるというサービスぶりでした。軍事機密などはどこにあるのかと思われるほど、大らかで開放的であったことには驚かされました。当時は日米ガイドラインの見直し以後、アメリカの艦船が次々と日本の港に寄港し、空母などの一般公開が行われていましたが、この原潜のVIPクルーズもそうしたPRの一環で、米軍に対する日本人の理解を深めることを目的としたものでした。このVIPクルーズに参加して、日本の防衛、日米安保、米軍人と日本人の関係についてあらためて考えさせられた1日でした。その後、ブレマートンは横須賀を離れ、コネツニー司令官、ウィリアムス大尉も異動のため1年後には横須賀を離れました。現在、ブレマートンがどこにいるのか、あるいは退役したかは明らかではありません。 |
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2001年2月、ハワイ沖を航行中の愛媛県立宇和島水産高校の実習船「えひめ丸」に米国の原潜グリーンビルが衝突、沈没させるという痛ましい事件が起きました。当時、原潜に民間人を乗せ、サービスのために急速潜行や急浮上などを体験してもらうというデモンストレーションが問題となりましたが、はからずもこのVIPクルーズはそれを裏付けるものとなりました。市民かわら版では2001年2月15日の風見鶏にこの関係を記述しています。 |
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