私を3日だけ花嫁にしてください… 文と絵が絶妙にマッチ
厚木市妻田に住む主婦・大矢美保子さん(66)が、このほど人間とキツネを主人公にした創作童話『久助の嫁さま』(市民かわら版社)を自費出版した。ワナにはまって苦しんでいたキツネを助けた久助が、キツネから求愛されて結婚するという奇想天外な物語で、協力を依頼された水墨画家・又村和夫さんの絵が物語にマッチして、ほのぼのとした情感を漂わせている。
大矢さんが童話を書き始めたのは今から30年ほど前。昭和56年(1981)共石(現在のJOMO)が主催する公募展「第12回創作コンクール童話の花束」に応募したところ、優秀賞を受賞した。受賞作「ブルックスのお客さま」は、嵐の日にやって来た風をお客様と間違え、風に「遊ぼうよ」と呼びかけるキツネの物語。これが縁で創作の世界にのめり込み、その後も何度か作品を仕上げて公募展に出したが、それっきり入賞には縁がなく、公募展に出すのは諦めた。その時、今後は周りを意識しないで自分の好きなように書くことに決めたという。
その後、しばらく創作活動は中断したが、3年ほど前、絵本の読み聞かせの会に入って学ぶうち、再び創作意欲に火がついた。今回も登場人物はキツネ。「人間の祖先は犬であったり狸であったりして、何らかの動物です。そこでキツネを登場させ、人間が命を助けたキツネから求愛されるのをテーマにした」と大矢さん。
出来上がった作品を公募ガイドの添削教室で指導を受けたところ、誉めてくれたため、出版を決意したという。出版に際しては、絵をどうするかが課題だったが、その時大矢さんの頭をめぐったのは、近所に住む水墨画家・又村和夫さん(76)に協力を依頼することだった。
又村さんは挿絵程度の絵しか考えていなかったため、原稿を渡されてびっくり。自身にとっても初めての挑戦で、本格的な絵本の制作となった。又村さんは物語の場面を描くためイメージをどうふくらませるかあれこれと思案。子どもの頃の村の情景や家で行われた婚礼、桑畑と田んぼ、大山の風景、村祭りなどを思い出しながら約9ヵ月間かけて絵を仕上げた。
「出来上がった作品を皆に見せると、文と絵がマッチしてとてもいいと言われた。いい経験をさせてもらった」と又村さん。 大矢さんも「又村さんの絵が好きだったから、又村さんに描いてもらえなかったら出版は断念しようと思った」と話す。二人は「子どもから大人まで幅広く楽しめる絵本です。大勢の方に読んでもらえると嬉しい」と話している。『久助の嫁さま』はB5判20ページ。1部1,200円(税込)<絶版になりました>(2009年4月15日)
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