言葉と精神の離乳食★わらべうた    by  文・大熊進子/え・鈴木伸太朗

NO.13

線香花火

え・鈴木伸太朗
 前号でほおずきについて触れました。鬼灯、酸漿、などの漢字がありますが、種類については私の記憶ではあまり定かではなかったのです。前号で触れた「千成ほうずき」は畑にできるもので、本当に小さい実がたくさんつきます。千も成るから千成ほおずきというのでしょう。ほうずきではなく、ほおずきが正しいようでした。
 東京地方のわらべうたを探すと、「種たんねんでろ 根はねんねんでろ」という歌がありました。私はそんな歌を歌いながらほおずきをもんだ覚えは全くないのです。むしろほおずきの頭がくるくる回りだすといい気分で「まあわりどうろのえのように〜」なんて歌っていたのをしっかり覚えています。
 でも「赤い衣服(べべ)きせて やるから 旋灯篭(まわりどうろう)になァれ」とか、「坊さん坊さん赤いべべ着せて観音様へ連れてってやるから早く廻り燈籠ンなァれ」などと歌っていた子どもが居たことを知ると、うらやましい気にもなります。伝わっているかなあ〜。だってほおずき遊びを紹介しても殆んどの親が知らないし、経験もないのです。
 先日妙な話をラジオで聞きました。鉢植えのほおずきには実のないものもある、しかし花屋さんで枝つきで売ってるものにはみんな実がついている、だからほおずきを買いたい人はちょっと触ってみると良い、といってました。なんか変な気分でした。千成ほおずきも目を皿のようにして探しますがまだ見つけることは出来ません。丹波ほおずきも、昔はあちこちにあったのに今は滅多に目にすることが出来ません。今年は林の相鉄ローゼンの前に毎年顔を出すつばな(ちがや)も出なかったし、どうしたのでしょう? 海ほうずきは軍配ほおずき、薙刀ほおずき、ひょっとこほおずきなどがあって、みんな貝類の卵だといわれていました。私は「ほおずきのウンチ」と思って、いつもそう言っていました。
 お祭りの定番、酸漿、吹き矢、山吹き鉄砲、メンコなどが消えたり少なくなってしまいました。ハッカパイプはまだ健在みたいですね。私は祭囃子を聞くと、矢も立てもたまらなくなってお財布片手に飛び出したくなります。「無駄づかいしちゃ駄目よ」という母の声を背中にお囃子の屋台の下に立ち、しばらくは隣組の男衆の演奏に聞きほれます。そしてお祭りの夜店の真ん中へ歩き出すのです。祭りの後のアセチレンガスの灯の下で片付けする人たちを見るのも好きでした。
 七夕が終わり、梅雨も開け、お盆(新暦の盆ですが)も終わると心は夏休み。カーッと暑い夏空と白い雲、風呂に水を張って丸ごと冷やすスイカ、お日さまの匂いがする畑でもいだトマトcc。
 『宿題を早く片付けてから遊びなさい!』という母の声。でもなんてったって夏休みが来るんですから楽しいものです。ね、前世紀の遺物の話も不思議でしょ? もっと面白いのは庭にたらいを置いて水を入れてぬるま湯程度になったら行水するんです。そのとき子どもたちは竹で作った水鉄砲で水の掛け合いです。本当に涼しくて楽しい遊びで終わると汗びっしょりでした。
 夜になると線香花火もありました。家族がそろって縁側で線香花火をするのです。手を揺らせると線香花火のポッチンがすぐ落ちてしまうから注意しなければなりません。蚊取り線香の香りと煙、そして蚊帳。蚊帳の中にとってきた蛍を放して光を楽しむのも夏の風物詩。でも最近保育士たちの集まりで「ほたるってきいたらどんな歌を思い浮かべる?」と聞いたら2〜3人が「ほたるのひかりまどのゆき」って言いました。これが今の時代。

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