言葉と精神の離乳食★わらべうた    by  文・大熊進子/え・鈴木伸太朗

NO.31

目に青葉 山ほととぎす 初がつお 

 5月は緑の季節。
 ♪ 鮮やかなみどりよ あかるいみどりよ ♪ という歌を小学校の4、5年生の頃歌いました、音楽の時間にね。
 休み時間はひたすら ♪ 夏も近づく 八十八夜 トントン 野にも山にも 若葉が茂る トントン あれに見えるは 茶摘じゃないか トントン 茜たすきに菅の笠 トントン♪ 
 と必死に手遊びをしたものでした。
 その頃、体を使って必死にあそんだものは今でもどうにかできるのです。不思議なもんですね、昔取った杵柄です。お手玉、竹馬、鞠つき、水泳、自転車、竹馬、鉄棒、など等……。
 こういう手遊びをはじめとした子どもの頃の遊びは、誰からも手をとって教えてもらったものではない、じっと眺めて、出来るとなったら「入れて」と言って入れてもらう。
 今、現在、私が子どもたちにあそび方を教えなければ知らないという事態は非常事態です。少なくとも9〜10歳くらいまでの子どもたちの毎日は遊びだと思うのです。遊びですから、喜怒哀楽、規律、忍耐、努力、集中、全てが含まれます。私たちの仲間には年齢に従ったハンディがあって、幼いものに対してはゆっくり、大きい子達は早くというようにしていました。大きい子達も始めはしとやかにゆっくり、しかしワクワクしてくればもうテンポは速まる、小さい子達が目を丸くしているのを楽しみながらアッチェレランド。まるで序破急。結局、中学生頃に能狂言を習うとき遊んだお蔭で序破急が感覚的にすぐ理解できました。
 こういう風にしていつ役にたつか分からない、しかし時が来たら一瞬にして昔の宝箱の蓋が開くように鍛えるのが幼児期の基本でしょう。 
 八十八夜の新茶は美味しくて、後はしぼっておかかをまぶしてお醤油をかけて頂くとちょっとした香のものです、それが終わる頃は端午の節句、こどもの日です。私は三月三日はおひな祭り、五月五日は端午の節句のほうが好き。綺麗なお雛様を飾ったり(私の家は戦争で全て焼けてしまったので素焼きのお雛様だったり版画のお雛様です)少しばかり華やかなおごちそうだったり…、五月五日はりりしい武者人形、兜、そして鯉のぼり、菖蒲。そういえばなぜ菖蒲を飾るのか…? 尚武に通じるからという説もありますが、日本の民話の「食わず女房」に菖蒲の畑に隠れたら鬼に食われなかったという結末があって、そこから疫病や悪いことから守るという説もあります。私は後のほうが好き。
 端午の節句には柏餅もつき物ですね。柏の葉は新芽が出てくるまで古い葉が落ちない。「子どもが生まれるまで親は死なない」「家が途絶えない」という思いを柏餅にこめたと聞いたことがあります。でも北海道の静内というところでは男性がお嫁さんをもらおうと頼みに来たときにお断りする場合は「柏の葉が落ちたらな」と言うと聞きました。ちょっと奥ゆかしくていいなあと思いました。
 鯉のぼりと一緒に吹流しや幟も立てますね、甲州のほうへ行くと「風林火山」の幟を良く見ます。東京は五色の吹流しが多いですね。古代中国の五行に基づいてといわれていますが、木・火・土・金・水・即ち青、赤、黄、白、黒。必要な栄養素みたいです。水に当たる色が黒というのが面白い。でも私は自慢にならない江戸っ子で「江戸っ子は 皐月の空の吹流し 口先ばかりで はらわたはなし」なのです。

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