山百合咲く辻(愛川町半原)

 山百合は神奈川県の県花である。毎年7月下旬から8月上旬にかけて、山中の谷間に、土手に、民家の石垣に、田んぼのへりに大輪の白い花を咲かせる。その独特の芳香は歩いていてそこに山百合が咲いていることを気付かせる。
 大きな花姿であるのに、なぜか慎ましさを感じさせる山百合は、私見を申せば群落でない方が好ましい。
 写真は私が住む愛川町半原の両向(りょうむかい)という山間の村落の一隅で撮影したものである。ここを流れる松葉沢は蛍の養殖が盛んで、時期になるとちらほらと山峡の里に蛍光が明滅する。
 蛍飛び山百合ひそかに咲く山村、半原両向は、自然豊かな愛川町にあって最も趣深い地域であると思う。わが住まいがある半原細野のニュータウン化しつつある宅地開発を鑑みれば、まさに別天地の感きわまるものあり。
 いつまでも変わらずにあってほしい山村の姿がここにある。(2010年7月下旬撮影)