言葉と精神の離乳食★わらべうた    by  文・大熊進子/え・鈴木伸太朗

NO.29

わらべうたで知った歴史上の事実

 3月の末に京都に行きました。桜にはまだちょっと早くて北野天満宮、随心院、智積院の梅を堪能しました。京都へ行く前に結(ゆい)というコーヒー屋さんへ行ったら、ご主人が「岩手では梅と桃と桜が一度に咲くのですよ」と教えてくれました。前号に私が書いたものを読まれてのことでした。「三つが一度に咲くから三春というのです」。なるほど、なるほど…。
 福島の三春もそうだと福島生まれの友人が言いました。あああ、原稿を書く前に知りたかったなあ〜。私の注意力の無さにお灸をすえた出来事でした。これからもうちょっと注意しよう。
 ところで桜の前に飯山観音にも行きました。桜のときだと車が入れなくなると思ったのは正解でした。良い山でした。ただ山ヒルが出るらしくトイレがやや怖かった。桜が満開になったらあの山全体がざわめきに包まれてワクワクするのでしょう。京都でも今から千三百年前には、七百年前には、太閤さんが、後醍醐天皇が、天狗さんが……言い出したらきりがないくらい今と歴史が一体となって存在しています。
 随心院では小野小町の塚もあり、♪牡丹に唐獅子竹に虎〜中略〜通う深草百夜の情け〜後略♪の故事のあるところでした。深草の少将が九十九夜通ったといわれている道などを見て、やれやれ毎夜毎夜牛車に乗ってまあ大変なことだったろうなあとつくづく感心しましたが、わらべうたで知っていたことが歴史上の事実(伝説的事実?)に出会うと感動もひとしおです。その歌、書いてみましょうか。
ぼたんにからじしたけにとら とらをふまえてわとうない ないとうさまはさがりふじ ふじみさいぎょううしろむき むきみはまぐりばかはしら はしらはにかいとえんのした したやうえののやまかずら かつらぶんじははなしかで でんでんたいこにしょうのふえ えんまはぼんとおしょうがつ かつよりさんはたけだびし ひしもちさんがつひなまつり まつりまんどうだしやたい たいにかつおにたこまぐろ ろんどんいこくのおおみなと とざんするのはおふじさん さんべんまわってたばこにしょ しょうじきしょうだゆういせのこと ことやしゃみせんふえたいこ たいこうさまはかんぱくじゃ はくじゃのでるのはやなぎしま しまのさいふにごじゅうりょう ごろうじゅうろうそがきょうだい きょうだいはりばこたばこぼん ぼうやはよいこだねんねしな しながわじょろしゅうはじゅうもんめ じゅうもんめのてっぽうふたつだま たまやははなびのおおがんそ そうしょうのでるのはばしょうあん あんかけとうふによたかそば そうばのおかねがどんちゃんちゃん ちゃんやおっかあしもんおくれ おくれがすんだらおしょうがつ おしょうがつのたからぶね たからぶねにはしちふくじん じんぐうこうごうたけのうち うちだはけんびしななつうめ うめまつさくらはすがわらで わらでたばねたなげしまだ しまだかなやはおおいがわ かわいけりゃこそかんだからかよう かようふかくさももよのなさけ さけとさかなはろっぴゃくだしゃきまま ままよさんどがさよこちゃにかぶり かぶりたてにふるさがみのおんな おんなやもめにはながさく さいたさくらになぜこまつなぐ つなぐかもじにたいぞうとめる……。
 1862年頃から歌い始められたといわれている江戸のしりとり歌です。ある保育園でこれを歌って聞かせ、「ペリーの黒船の頃の歌かな」と言ったら園児の1人が「アア、サカモトリョウマのころね」といったので私は吃驚しました。たまにこういうことがあるから人生面白いのでしょうね。

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