言葉と精神の離乳食★わらべうた    by  文・大熊進子/え・鈴木伸太朗

NO.30

牡丹に唐獅子

 今年も桜をたっぷり見ました。若草色の柳と桜の美しさ、桜並木、桜林、山の中にほんのり咲く桜…………。これから八重桜の頃は桜湯を作るために時期を見逃さないようにしなければ………と思っています。前号では「ぼたん」に「からじし」を全部平仮名で書きましたが漢字を当てはめてみましょう。
 牡丹に唐獅子竹に虎 虎を踏まえて和藤内 内藤様は下がり藤 富士見西行 うしろ向き むき身はまぐりばかはしら 柱は二階と縁の下 下谷上野の山かずら 桂文治は話し家で でんでん太鼓に笙の笛 閻魔は盆とお正月 勝頼さんは武田びし ひし餅三月雛祭り まつり万燈花車屋台 鯛に鰹にたこまぐろ ロンドン異国の大港 登山するのはお富士山 三べんまわって煙草にしょ 正直正太夫伊勢のこと 琴に三味線笛太鼓 太閤様は関白じゃ 白蛇の出るのは柳島 縞の財布に五十両 五郎十郎曽我兄弟 鏡台針箱煙草盆 坊やはいい子だねんねしな 品川女郎衆は十匁 十匁の鉄砲二つ玉 玉屋は花火の大元祖 宗匠の出るのは芭蕉庵 あんかけ豆腐に夜たかそば 相場のお金がドンチャンチャン ちゃんやおっかあ四文おくれ お暮れが過ぎたらお正月 お正月の宝船 宝船には七福神 神宮皇后武内 内田は剣菱七つ梅 梅松桜は菅原で わらで束ねた投げ島田 島田金谷は大井川 かわいけりゃこそ神田から通う 通う深草百夜の情け 酒と肴は六百出しゃ気まま ままよ三度笠横ちょにかぶり かぶりたてに振る相模の女 女やもめに花が咲く 咲いた桜になぜ駒つなぐ つなぐかもじに大象とめる 
 1862〜3年(文久2、3年)頃から明治初期に掛けて流行ったしりとり歌でお手玉、鞠つき、はては江戸子守唄の旋律で子守唄としても歌われたそうです。寝つきの悪い子にとっては相当長い歌ですからよかったのかもしれません。幼児から合唱団員までみんな覚えてお手玉をこれにあわせてやります。3分ちょっとですから一度も落とさないとなると相当の集中力を要求されることになります。子どもたちが覚えているのを見ていると中々面白いです。
 〜ぼたんにからじしたけにとらをふまえてわとうないとうさまはさがりふじみさいぎょううしろむきみはまぐりばかはしらは〜
 というように省略しながら尻取りをしていくのです。数年前にNHKの大河ドラマ「忠臣蔵」の頭に牡丹と唐獅子模様が使われていました。内藤様は下がり藤 で自分の家の紋はなんだろうと興味を持った子どもも出ました。地獄の釜の蓋がお盆とお正月に開くということも知りました。山を駆け巡ったり、川で河童のように泳ぎまくったというある保母さんも「そういえば母はお盆には決して泳ぎに行っちゃあいけないといってました」と思い出しました。
 遠足で茅ヶ崎に行ったら柳島に「白蛇が出た」という記念碑を発見し、歌の正しさを実感した子供もいました。凄いトラックの後ろを走っていたら浮世絵まがいの絵と共に「咲いた桜になぜ駒繋ぐ 駒が勇めば花が散る」と書いてあって運転している人の顔が見たくなったこともありました。だって小唄を車に書くなんてちょっとシャレているじゃないですか。「つなぐかもじにたいぞうとめる」とありますが、私は清水寺で確かに女の髪の毛で編んだ大綱を見た記憶があるのですが、あれのことでしょうかねえ。
 あるときは子どもが「先生、女やもめに花が咲くのなら男やもめはどうなるのですか?」とたずねました。「うじがわくの」と答えたら「あ、そうなの」と納得してました。

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